【ホンレコ!】5冊目『悪童日記』
mediba社員が実際に本を読んで得た“学び・気づき・感動”を、自分と同じく求めているであろう方たちへお届け。本のレコメンド、略して『ホンレコ!』。
5冊目のレコメンダーは、社内の本好きが集うサークル「読伝会」のメンバー、河越が担当します。子供の頃から大の読書好き。ただ、“本当に夢中になった読書体験”といえるものはそんなに多くはないそうです。そんななかで「ダントツに一番」だと思える本を、満を持してレコメンドしてもらいました。
本日のおすすめ図書
こんなあなたに
海外文学に浸りたい
文学好きから定評のある作品なら安心
経験したことのない読書体験を得たい
※ee部とは
https://koho.mediba.jp/2019/06/27/department-employee-engagement/
はじめに
私が、初めてこの本を読んだのは、発刊当時の学生の時分なのですが、読み始めたら食事はもちろん、トイレに行くのも我慢するくらい夢中になりました。数年前に”断捨離”でほとんどの本を処分したのですが、この本と数冊だけどうしても捨てられず、手元に残してしまいました。残した数冊の内のもう二冊は、この本の続編二作です。その二冊含め、三部作どれも、こころ揺さぶる、すごい作品です。もし、この本を読まれたら、続けて続編も読まずにはいられなくなると思います。
どんな本?
戦火の中を生き抜く双子の少年。疎開先の「おばあちゃん」のもとで過酷な日々が始まります。この本は、少年らが直面した非情な現実を記した日記。辛く、悲しい状況の中をどう生き抜いていくか、克明に、しかし淡々と綴られたその内容から、少年らの心情や周囲の状況を察知することになります。
ハンガリー生まれの亡命作家が書いたデビュー作で、母語ではないフランス語で発表したということでも、とても話題になりました。
ここがポイント!
人名や地名は一切なし
ハンガリー出身の女性作家の作品なので、この戦争は、ヨーロッパで起きているもので、物語から第二次世界大戦のことと推測されるのですが、具体的な地名や史実は明記されません。話に戦争は出てきますが、メインテーマは非常時における人間の営み、不条理の話で、戦争はただ、それを照らす装置だからなのだと思います。読んでいて、固有名詞の必要性は全く感じられません。
日記形式かつ、独特な文体表現
戦争の残酷さや人の愚かさや冷酷さを描きながら、どこかファンタジーのような、現実離れしているような、不思議な感覚で、物語は進行していきます。なぜ、そのように感じるのか、ローティーンだと思われる主人公たちの日記という設定の小説で、自分達が見聞きした事実を淡々と、私感や感情を入れず、記していく、その文体表現がそうさせているのではと思います。そして、主人公たちの日記に記される、切り取られた事物に向ける少年らの眼差しが、どんな劣悪な状況のなかでも、決して屈しない高い理想と人間性に溢れているところが、とてもヒロイックです。そのような点が、何かおとぎ話のように感じる所以なのかもしれません。
最後に
以上を以て、私からのレコメンドとなるのですが、読み返してみて、この文章では、この本の魅力をイマイチお伝えできていない気がして不本意です。実際に少しでもこの本を読んでいただくのが、一番伝わるかと思います。ですので、最後にこの本で一番好きな(好きというか、心えぐられる部分)を抜粋して、ご紹介します。この部分を読んで、興味が出ましたら、是非、本を手に取ってみてください。そして、読めばきっと、いままでに感じたことのない読書体験が得られるでしょう。
(『悪童日記』「精神を鍛える」より。表示都合により改行位置のみ変更)
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