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多様性のあるサービスをどうつくる? PLAYERSのタキザワさんと考えてみた

こんにちは、広報の白井です。 先日、一般社団法人PLAYERS(以下PLAYERS)と日本マイクロソフトが共催するワークショップ「DIVERSITY WORKSHOP 03」に弊社CXOである岡が参加しました。

「視覚障がい者が熱狂するエンタメコンテンツを共創する」をテーマに、視覚障がい者とエンジニアとともに、アイデア発想からプロトタイプ制作に取り組むというもの。当事者と一緒にさまざまなワークを体験しながら、視覚障がい者が抱える問題にポジティブにアプローチする試みは大変刺激的なものでした。

そこで今回はPLAYERSのタキザワケイタさんにお話を伺いました。聞き手は岡。組織として、またものづくりの担い手として、多様性のあるサービスや仕組みをどのようにつくっていくべきなのでしょうか。

(右)PLAYERS主宰のタキザワケイタさん。ワークショップデザイナー・サービスデザイナーとして社会や企業が抱えるさまざまな課題の解決に取り組んでいる。

子どもたちが大人になった時、恥ずかしくない日本にしたい


:先日のワークショップに参加してタキザワさんと直接お話したいと思い、すぐにお声掛けさせていただきました!

タキザワさん(以下、敬称略):お声掛け、ありがとうございます!

:ワークショップで体感した多様性の大事さですが、medibaも多様であることを目指しCREDOの中でうたっています。どこかにブレてはいけない軸みたいなものがあるのではないかなと。一方で、単一な価値観もそれはそれで弱い組織になってしまう・・・そんな話ができればなと思っています。
最初に、PLAYERSを立ち上げた経緯からお伺いできますか。

タキザワ:結果的に生まれた、というのが正直なところで、元々はGoogleのコンペに応募するために集めたチームでした。活動が拡大していく中で対企業とのやり取りやコラボが増え、個人の活動としての範囲を超えてきていましたし、2017年12月に東京メトロでの実証実験を控えていたこともあり、直前の11月に一般社団法人を設立しました。

:そもそもの活動はなぜ始めたんですか?

タキザワ:語ると長い話になるのですが……、頑張って簡潔にまとめます(笑)。

大きなきっかけは妻の妊娠です。妊娠中に絶対安静を言い渡された時期があったのですが、検査で通院する必要がありました。


行きはまだよかったのですが、検査が長引いたりして帰宅ラッシュに巻き込まれてしまいました。席を譲ってくれそうな方の前に立ったり、マタニティマークを見えるようにしたりしても、なかなか席を譲ってもらえなかったのですが、乗り換えのタイミングでサラリーマンの方がとってもスマートに譲っていただき、大変ありがたかったです。

ただ思い返すと、私も妻が妊娠するまでは妊婦やマタニティマークに関する知識がなく、席も譲ってなかったんです。

その後「マタニティマークをつけていて危険な目にあった」という記事がネット上でバズったのを見て、自分の子どもたちが大人になったとき、いまの日本のままでは恥ずかしい。子どもたちの未来のために「やさしさから やさしさが生まれる社会」をつくりたいと思いました。

それらの体験をきっかけに、電車で立っているのがつらい妊婦と周囲の席を譲る意思のある乗客を、ビーコンを内蔵したデバイスとスマホアプリでマッチングする、「スマート・マタニティマーク」を考案しました。それがグーグルの「Android Experiments OBJECT」というコンテストでグランプリを取りました。プロトタイプやムービーをネットや展示会で発表すると、「はやく自分も使いたい」という妊婦さんや、「高齢者や障がい者も使えるようにしてほしい」という意見をたくさんもらいました。じゃあ、問題提起やプロトタイプで終わらせずに、社会実装を目指そうと思いました。

タキザワ:社会実装に向けて、妊婦とサポーターの双方に専用アプリをインストールしてもらう必要があったり、東京圏内の出生数を調べたらマネタイズが難しいことが課題になりました。その課題を解決するアイデアとして「&HAND(アンドハンド)」を考案しました。デバイスに内蔵するビーコンをLINE Beaconに、アプリをLINEに変更し、対象者を妊婦さんの他に障がい者や訪日外国人などに広げたアイデアは、「LINE BOT AWARDS」でグランプリをいただきました。現在は、ビジョンに共感いただいた企業と連携しながら、社会実装に向けた実証実験などを進めています。

障がいを持つ方は「僕らの知らない世界を知っているプロ」

:タキザワさんの原体験がPLAYERSの活動につながっているのですね。障がいを持つ方へのプロダクト提供もしていらっしゃいますが、そちらは何がきっかけだったのでしょうか。

タキザワ:個人的には「&HAND」のプロジェクトを始めるまでは障がいを持つ方との接点がまったくなく、自ら積極的に関わろうとはしていませんでしたが、PLAYERSメンバーの知り合いに聴覚障がいを持つ方がおり、その方にヒアリングしながらサービスを検討していきました。

:実際に行ってみて、どのように感じられましたか?

タキザワ:最初はやっぱり怖かったですね、どう接していいのかわからなかったです。いま思うと、「障がい者」というフィルターで見ていたんだと思います。

でも、実際に会って話して仲良くなっていくと、障がい者である前にひとりの人間であり、それぞれが色んな魅力を持っていることがわかりました。もちろんハンデになることも多いけど、それがあるからこそ「僕らの知らない世界を知っているプロ」でもある。音のない世界や光のない世界がどんなものか? 知らないことをいっぱい教えてくれる。それをお互いに共有するのは楽しいし、新しい何かが生まれる予感がしてワクワクする。

:そういう感覚は大切ですね。僕も近しいものを感じたことがあります。前職でポータルサービスに携わっている時、視覚障がいを持つ方にユーザーインタビューしました。ある場所にたどり着くのに、100回キーをタップしないといけないことがあると聞いたとき、「自分は何も知らなかった」「狭い世界しか見ていなかった」と気づいて、本当に恥ずかしくなりました。

そこから「会わなければわからない」という思いが強くなりました。先ほどおっしゃっていた「一人の人間」であるというのはまさにその通りですよね。

ワークショップで得た気づきと課題

:タキザワさんの活動やPLAYERSとしての活動がそこから加速したように感じますが、いかがですか。

タキザワ:「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」などのイベントを体験したり、「ユニバーサルマナー検定」の資格をとったりする中で、ますますインクルーシブデザインに興味を持つようになりました。そんな中で、2018年に「超福祉展」で発表した「聴覚障がい者向け&HAND」のプロトタイプについて、ユーザーテストを兼ねたワークショップを実施しました。

受付で耳栓を渡し、耳栓を付けた状態でペアを変えながら自己紹介しあう。実はこの中に聴覚障がい者が混じっていて、ワークのあとにネタバラシをしました。

:新しい人狼ゲームみたいですね(笑)。

タキザワ:そうですね(笑)。やってみると聴覚障がいを持つ方は表情がとても豊かで、ボディランゲージも上手に使われていることに気づきます。また、健常者だけではなく障がいを持たれた方にも、新しい発見や気づきを持ってもらえるように意識して、ワークショップをデザインしました。

:一方で課題に感じることはありますか?

タキザワ:障がいといっても、程度や症状は人それぞれで多岐に亘ります。「見えづらいけど、頑張れば見える」という視覚障がいの女性が、「私は障がい者というラベル張りをされたくない」と言っていました。障がい者とひとくくりにしてしまわずに、いかに目の前の人に寄り添っていけるかは、これからの大きなテーマです。

多様な価値観を持ったメンバーで化学反応を起こす


:障がいを持つヒトたちもいてこその多様性だと捉えると、サービスの幅も広がりますよね。

タキザワ:そうですね、多様な価値観を持ったメンバーがいると、化学反応が起きやすくなるので、障がいを持つ方との共創は非常に可能性があると思っています。

また、子どもも可能性の塊で、最近は子どもたちの創造力を引き出すワークショップにもチャレンジしています。大人って既成概念にまみれているじゃないですか(笑)。子どもたちの方がクリエイティブだしイノベーティブなので、そこから新サービスやプロダクトのヒントを得ようというアプローチです。

:それは僕もとても興味があります。実際、子どもたちとワークショップやってみてどうでした?

タキザワ:「学校の課題を攻略せよ」というアイデアソンを開催しました。僕らにとって学生時代はだいぶ昔の話で、思い出しながら考えることになってしまいますが、子どもたちにとっては日常なので、「先生がつまらない」「いつも同じ友達だと飽きちゃう」など課題が全くブレていなかったです。大人はまず課題を出して、整理して……、その中から形にできそうなアイデアを考えていってしまう。それに対して、子どもたちはこうなってほしいというビジョンが明確でしたね。ほんと、子どもたちからは学ぶことばかりです。

一人の人間として共感し合いながら、一緒に未来を描いていく

:最後になりますが、タキザワさんの今後の野望を教えていただけますか?

タキザワ:インクルーシブデザインのワークショップを実践していると、障がいによってできないことを、健常者ができることに近づける「マイナスをゼロにする」という発想になりがちです。でも、障がいがあるからこそ生み出せる新しい価値もあるはず。

一人の人間として共感し合いながら、「マイナスからイチを生み出す」活動を共創していきたいです。

:私たちも一緒に多様性のある社会をつくっていきたいです! ありがとうございました!


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