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【ホンレコ!】16冊目『推し、燃ゆ』あらすじと感想

mediba社員が実際に本を読んで得た“学び・気づき・感動”を、自分と同じく求めているであろう方たちへお届け。本のレコメンド、略して『ホンレコ!』。

16冊目のレコメンダーは、編集グループの島田。仕事では『au Webポータル』のニュース編成に携わる一方、プライベートでは応援のために遠征するほどのアイドルファン。そんな彼が選んだのは、同じくアイドルを応援する人間を描いた芥川賞受賞作。


本日のおすすめ図書

『推し、燃ゆ』
(著者)宇佐見りん
(出版社)河出書房新社

こんなあなたに

  • 話題作が気になる

  • 何かが「すごく」好き

  • 「推し」ってなに?

レコメンダー 
編集1グループ 島田隆史

どんな本?

宇佐見りん氏のデビュー2作目であり、2020下半期の第164回芥川龍之介賞受賞作。推し(男性アイドル)を推す(応援する)女子高生“あかり”を描く物語です。ある日、あかりの「推し」が事件を起こし、炎上してしまう。本作はその後のあかりの“生活”から、葛藤や苦しみを色濃く描いていきます。

ここがポイント!

アイドルファンの「あるある」が満載

私もある女性アイドルのファンです。「推し」に日々の生きる気力をもらったり、その一挙手一投足に心を揺さぶられたり、グッズを購入して部屋に飾ったりしています。

そんな私にとって印象的だったのが、あかりが姉に推す理由を尋ねられた際のモノローグ。

“愚問だった。理由なんてあるはずがない。存在が好きだから、顔、踊り、歌、口調、性格、身のこなし、推しにまつわる諸々が好きになってくる”

私やあかりのような「推しを持つ人間」の描写が痛ましいくらいに秀逸で、読みながら何度も首を縦に振ってしまいました。また、「SNSでのファン同士の交流」や「地上アイドルと地下アイドルの対比」といった、いまのアイドルビジネスを取り巻く界隈の描写も楽しめました。

大人になることへの葛藤

作中では、「みんなが難なくこなせる何気ない生活もままならない」人の生きづらさも並行して描かれています。

あかりは、家庭や学校、バイト先など自分の生活するすべての世界でさまざまな問題を抱え、自らの肉体の重さを日々実感します。病院での診断によりその重さにも名前がつきますが、推しを推すことに全身全霊をかけて打ち込むことで、その重さ(問題)から逃れてきました。

しかし、身の回りの状況は変化していき、重さを背負って大人にならなければならない現実に直面します。「誰にもわかってもらえない」と嘆くあかり。著者は、細かいディティール描写だけでなく感情を描くのもうまいので、ときに読んでいて苦しくなることも。ラストシーンもまた重い読後感でしたが、私は前向きに解釈したところもあり、そこはよかったですね。

まとめ

本作はフィクションですが、ひとりのアイドルファンとしてはノンフィクションのようにも感じられました。それくらい巧みな情景描写に引き込まれ、読書が苦手な私でもあっという間に読了しました。

星の数ほどアイドルがいる現代。そんな中で一人のアイドルに傾倒し、SNSに「病めるときも健やかなるときも推しを推す」と書き込んだ主人公に私は心を打たれました。(その是非は置いておくとして)アイドルに向き合うファンの姿の模範のようなものを描いたこの作品は、ある種のバイブルにもなり得るのではと思います。 何かが「すごく」好きで、そこから生きる力をもらっている人にはオススメの一冊です。きっと刺激を受けると思います。

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