営業からシステムディレクターへ。キャリアチェンジで見つけた「自分の仕事」
営業職から30歳目前でエンジニアに転身したシステムディレクターのS.M.。そのきっかけは営業時代に感じた「もどかしさ」だったと言います。
どのようにしてキャリアチェンジを実現し、現在の仕事にたどり着いたのか。挑戦の軌跡と、仕事に対する思い、そして未来への展望を詳しく伺いました。
システムディレクターはビジネスと開発をつなぐ橋渡し役
——現在の職能であるシステムディレクターとはどのような役割を担っているのでしょうか。
システムディレクターの役割は、ビジネス側と開発チームの橋渡し役です。一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、大規模なプロジェクトではとても重要な役割を果たします。
基本的にはビジネス側からの仕様追加などの要望に対して、それをどのように実現するかを考え、開発チームに指示を出すのが基本的な業務になります。ただ、この過程では単に要望を伝えるだけでなく、技術的な実現可能性やセキュリティ面でのリスク、開発にかかる時間やコストなど、多角的な視点で検討する必要があります。
具体的には、要望を受けて実現可能な方法を複数考え、ビジネス側と相談しながら最適な方法を決定します。ときには、ビジネス側の要望をそのまま実現するのではなく、より効果的な代替案を提案することもあります。
——開発チームの取りまとめもされているそうですね。具体的にはどのような業務をされているのでしょうか。
おもな業務は「チームメンバーのスケジュール管理」と「設計の方向性についてのレビュー」です。開発チームが作成した設計書をチェックし、適切な方向性で進んでいるかを確認します。
スケジュール管理では、プロジェクト全体の進捗を把握し、遅れが生じそうな部分を早期に発見して対策を講じます。また、各開発者の作業量が適切かどうかの確認も私の仕事ですね。
設計のレビューでは、機能面だけでなく、将来の拡張性やメンテナンス性も考慮しているかをチェックします。例えば、新機能の追加が容易な構造になっているか、コードの可読性は十分か、などの点を確認します。
これらの業務を通じて、プロジェクト全体の品質とスピードのバランスを取ることが重要な役割です。
大規模開発プロジェクトで「越境」を志願
——印象に残っているプロジェクトについて教えてください。
最も印象に残っているのは、『ポイントためる』サービスの管理画面に新機能を追加したプロジェクトです。このプロジェクトでは、100万人以上のユーザーに一括でポイントを付与できる機能を開発しました。
このプロジェクトがとくに印象深いのは、通常のシステムディレクターの業務範囲を超えて、自ら設計、実装、テスト、リリースまでを担当したからです。プロジェクトの勉強のために自ら志願しました。
——なぜ自ら手を動かすことを選んだのでしょうか。
システムディレクターはエンジニア組織に所属していますが、自身がコードを書くことは基本的にはありません。ただ私はこの仕事をする上で、システムの仕組みを深く理解することが重要だと考えました。「100万人以上のユーザーに一括でポイントを付与」という規模も影響範囲も大きな要望に対して、どのように実現できるかを理解していないと、適切な提案ができません。
例えばコンビニ経営であれば、スタッフに指示を出す店長はスタッフ経験がなければできませんよね。私も、自分が一連の業務をできる状態になってから、ほかの人に任せるのが正しいと考えました。この経験は、その後の業務で技術的な判断をする際に大いに役立っています。
——プロジェクトを通じて、とくに苦労した点はありますか。
最も苦労したのはテストの部分です。すべてのパターンが網羅されるように、どんな使われ方をしてもエラーが起こらないことを確認するテストを作成するのに苦労しました。
例えば、ファイルの件数が0件の場合や、ファイルの形式が間違っている場合、予期せぬ大量のデータが入力された場合など、様々なケースを想定しなければなりませんでしたし、セキュリティ面でも、不正なアクセスや操作に対する防御を確認する必要がありました。
当初は、開発以外のテストにこれほど時間がかかるとは思っていなかったので、スケジュールが遅延することに焦って上司に相談もしました。上司からは「スケジュール遅延よりもエラーが起こってしまっている方が問題」だと言っていただいたので、以降は時間よりも問題を潰していく方に意識を移して進められました。
キャリアチェンジの背景にあった「もどかしさ」
——もともと営業職だったと伺いました。なぜエンジニアへとキャリアチェンジしようと思ったでしょうか。
営業時代、お客様の前に立って商品説明をする際、中身のことがよくわからないまま説明することに辛さを感じていました。結局、お客様も技術者の方を頼りにしてしまい、「自分は何もできない」というもどかしさがありました。
そういうこともあって、そのときの私は営業という仕事よりも「自分が何かを作った」という達成感が得られる仕事がしたいと思ったんです。
また、物理的な製品を扱うビジネスの難しさも感じていました。在庫管理や輸送のコスト、設計ミスによる損失など、物を扱うことの複雑さを目の当たりにしました。そこで、PC1台でもできるITの仕事に魅力を感じるようになりました。
——エンジニアへの転身を決意されてからは、どのように準備を進められたのか教えてください。
2ヶ月間オンラインスクールでプログラミングの勉強を始めました。週20時間の勉強を目標にして、仕事以外の時間はほぼそれに費やしましたね。平日は仕事が終わったあとに、休日は一日中勉強をしていました。
ただ、その時点ではまだエンジニアになると決めていたわけではなかったんです。まず自分にプログラミングができるかどうかを確認し、その後転職活動をしてみて、もし良い会社が見つからなければ趣味でサイト制作をする程度でも良いかなと考えていました。
——30歳近くでのキャリアチェンジは、不安もあったのではないでしょうか。
もちろん、大きな不安がありました。ここで失敗したらキャリアも途切れてしまうし、大げさに言うと人生が終わるのではないかとさえ思いました。一方で「このタイミングを逃したら変化できないかもしれない」という危機感もあって……。
不安を乗り越えられた理由のひとつは、過去に外国語学習や留学の経験があったことです。大学時代に新たな言語を学ぶために海外留学し、前職でも4ヶ月間イギリスで研修を受けた経験がありました。新しいことを学び、未知の領域にチャレンジすることに抵抗がないのは私の強みのひとつだと思います。
新しい技術や知識をもっと獲得したい
——今後、チャレンジしてみたいことはありますか。
新しい技術を使ったプロジェクトに携わってみたいですね。例えば、Go言語(Googleが開発したプログラミング言語)などのバックエンド開発で人気の言語を使ったプロジェクトに参加してみたいです。
また、現在はReactというJavaScript ライブラリの勉強を始めようとしているところです。バックエンドとフロントエンドの境目がなくなってきているので、両方の知識を持っておくことが重要だと考えています。
おまけ! M.のちょこっとメモ
ここまで読んでくださりありがとうございます!
最後に人となりをもっと知ってもらうべく、さらに3つ質問をしてみました。
📝編集後記
インタビューを通じて、キャリアチェンジの勇気とそれを支える前向きな姿勢の大切さを感じました。営業からエンジニア、そしてシステムディレクターへと、常に新しい挑戦を続ける姿勢は、多くの人にとって励みになるのではないでしょうか。今後の活躍に、ますます期待が高まります。
2017年中途入社。カレーとチャイと植物観察が好きな二児の父。「medibaのここがなんかいい」を言葉にして伝えられるようにがんばります
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