【ホンレコ!】14冊目『読みたいことを、書けばいい。』
mediba社員が実際に本を読んで得た“学び・気づき・感動”を、自分と同じく求めているであろう方たちへお届け。本のレコメンド、略して『ホンレコ!』。
14冊目のレコメンダーは、編集3グループの榊原。彼女が選んだ本は、編集者らしく「書くこと」について書かれた本。ハウツー本ではないと主張されたその本は、「書くこと」に関心がある人すべてに読んでほしい入門書でした。
本日のおすすめ図書
こんなあなたに
書くことが好きな人
書くことが上手くなりたい人
書くことが苦手になってしまった人
どんな本?
この本は「読まれる文章術!」とうたうようなハウツー本ではないと著者は断言しています。しかし、実際に読んでみると、文章を書く上で知っておきたい基礎知識や心構えについてしっかりと書かれています。そのうえで、ユーモアのある文章やジョークが散りばめられており、ためになるのにクスッとしながら読み進められる一冊です。
ここがポイント!
読まれる文章術? そんなことよりも……
まず著者は、読まれる文章を書こうと励むよりも、書くこと本来の楽しさと面倒くささを知ってもらいたいと述べています。
でもそれは「電通で24年間もコピーライターとしてキャリアを積み、人気連載ももっていたような経歴の人だから言えるんだ!」……と編集者の端くれである私は思ってしまいました。
というのも、私の悩みこそが「書くことのおもしろさ」にあるからです。現在、それを見失ってしまっているんですよね……。楽しさが消えたのに面倒くささはちゃんと残っている。本当に困ったものです。
しかし、著者が主張する「自分が読んでおもしろいと思うものを書け」というのは、どうやら書くことがおもしろいかどうかとは別物のようなのです。
書く対象をおもしろいと思い、書いた文章をおもしろいと思え
これは著者が電通時代に先輩から教えられた心構えです。
編集者・ライターは必ずしも書く対象について詳しいわけではありません。だから、まったく話したこともない、聞いたこともない人、全然知識のない物事について詳しく書くという場面も、ままあります。
ですから、インタビュー記事を書く場合は事前に取材相手のことをみっちり調べます。
事前に相手からヒアリングができたらよいのですが、できないケースは過去のインタビュー記事や執筆記事、著書があれば本も読むなど、相手が世間にアウトプットしたコンテンツの内容はすべて頭に入れた状態でインタビューに臨むようにするのです。
これだけ調べ続けていると、少なからず心に変化が現れてくるのではないでしょうか。話したこともない相手に対して、一方的ながら親しみが湧くかもしれません。これが著者のいう「本気の恋」なのではないでしょうか。
もともと縁もゆかりもなかった人や物事を自ら調べておもしろがる。そして、自分がおもしろいと思う文章を書く。おそらく私がおもしろいと思える文章が書けていないのは、「本気の恋」ができていないからなんだろうなと思います。
文章で伝えたいこと×100=事前に調べるべき情報
なるほど、やはり文章を書くためには膨大な量を調べないといけないということですね。
しかも、インターネット検索だけでなく、「一次資料に当たらなければ話にならない」と著者は述べています。紙媒体以外にも個人や法人に問い合わせをしたり、歴史資料館・博物館など施設に足を運んだりと、積極的に動かないと手に入らない情報もあります。
また著者は、聞きかじった単語の意味や重みを深く理解せずに使ってしまうことにも警鐘を鳴らしています。普段使っている単語を改めて見つめ直し、自分のなかで再定義するべきだそうです。それができなければ、その単語を使って他人に伝えることはできないと述べています。
意味を調べずに聞きかじった単語を使ってしまった私の失敗談があります。とあるテキストの執筆で、調べた記事にあった単語をなんとも思わず書きました。
その原稿の確認をした上司から「この単語の意味、僕は知らないんだけど知ってる?」と聞かれ、そのときの私は何も言えませんでした。
記事によく表記されているから、みんなが使っているからと自分もわかったつもりになって単語を使ってしまうのはありがちかもしれませんが、編集者として気をつけないといけませんね。
まとめ
私がこの本を選んだ最初の理由は、「感想記事をツイートしたら、著者の目にとまるかもしれない……!」と思いついたからです。完全な下心スタート。
しかし、読んでみると今の私にグサグサと刺さりました。読んでいても、これを書いていても、なぜか泣けてくるのです。泣けるエピソードなんて一切ないのに。
おそらく、文章を書く上での基礎知識や心構えを読んで、かつて教えられた初心を思い出したということと、著者がおもしろがりながらこの本を執筆している姿を想像してうらやましくなったからだと思います。
でも、そんなに著者がうらやましいなら私も「おもしろがれるようになるべき」では?
そう思えるようになったので、これからも精進していきたいと思います。
書くことが好きな人、上手くなりたい人、苦手だけれど挑戦してみたい人、私みたいに書くおもしろさを見失ってしまった人など、この本は書くことに関心のあるすべての人に読んでほしい入門書です。「書くこと本来の楽しさと面倒くささ」。あなたも見つめ直してみませんか?
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