【ホンレコ!】1冊目『「ついやってしまう」体験のつくりかた』
最近、本、読んでいますか? ビジネス、教養、文芸、実用、専門書……etc。なんだったら同人本だってかまいません。
ただただ流すことができる動画や音楽とは違い、自身で掬い取ろうとしなければ情報を得られない文字の海。だからこそ読む前に、“読後に得られる体験”を実際に読んだ人から聞いてみませんか?
この企画は、mediba社員が実際に本を読んで得た“学び・気づき・感動”を、自分と同じく求めているであろう方たちへお届け。本のレコメンド、略して『ホンレコ!』。記念すべき1冊目のレコメンダーは、メディア編集グループのリーダーが担当します。某有名ゲーム誌の編集経験も持つ生粋のゲーム好きの彼。どうやら“学び”も、ゲームをフックに取り入れるようで……。
本日のおすすめ図書
こんなあなたに
UXを学びたい
ゲームが好き
難しい例えは苦手
どんな本?
「UXってこういうことか!」と誰もが実感できる入門書です。『マリオ』や『ドラクエ』など有名ゲームを題材に、隠されているおもしろさの仕掛けを、元・任天堂企画開発者である筆者がわかりやすく解説してくれます。
ココがポイント!
「はじめに」から「つい」読み進めたくなる
序文でそう話す著者の言葉にいきなり惹かれました。任天堂在籍時に「ゲームでどう心を動かすか」に心血を注いできた著者の武器こそ、「心を動かす体験のつくりかた」と言われて気にならない人がいるでしょうか(いや、いない)。自分も編集者としてそういうことを考えてきたつもりではありますので……、そんなに自信を持って言われたら「つい」ページを捲ってしまいますよね。
タイトル画面に秘められたメッセージとは?
題材が有名ゲームということで、まずは『スーパーマリオブラザーズ』。あの「おもしろくなさそう」なスタート画面に注目すると……、なんだか「右に進みたい」「進まなきゃ」と思わせてくれている気がしませんか。マリオの配置、画面左に描写された○○、果てはマリオのヒゲすらもその欲望を喚起する仕掛けだと著者は言います。そしてクリボーが出てきたときにプレイヤーが無意識に感じるのが「右で合っていた!」という超プラスの感情。何の説明もないのに、遊ぶ人の気持ちが初っ端からグラグラと揺さぶられているわけです。
サービス運用で考えなければいけないことがそこにはある
おつぎは『ドラクエ』。人気イベントの「ぱふぱふ」が、正統派RPGと呼ばれる作品になぜ組み込まれなければならなかったのか。その謎解きのきっかけは「ぱふぱふ」登場タイミングにあると言います。この稿の種明かしも、たとえばサービスやサイトの運用者にはグサッと心に響くのではないでしょうか。ところで「ぱふぱふ」って何のことなのでしょうね。これは完全に余談ですけど、こういう言葉選びのうまさも『ドラクエ』のすごいところだよなというのは改めて思ったことです。「ホイミ」なんていかにも回復しそうな感じの単語をどう思いついたのでしょうか……。
読み終えて
「UXが身近になった」というのが一番の感想ですね。ユーザーにゲームを遊んでもらうって、わりと学習や作業の連続であって、よいUXがたくさん詰まっていなければユーザーは遊び続けられない。たしかにそりゃそうですよね。
引用で恐縮ですが、泣いている子供をあやすときを例に出し、
と言われると、なんだかくすぐったい気持ちにもなりますし、ああ、それがUXということなのねと妙に納得してしまいました。
まだUXという言葉の無いころから、「ユーザー体験という概念」は存在していたし、過去の名作ゲームから「それ」を紐解いていってくれるのがおもしろくってページを捲るのを止められなかったです。これはどこまで計算して作っていたのだろうか、意図したものなのか、それとも偶然なのか……、そんなことを考えるのも楽しいと思わせてくれる一冊です。
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