【ホンレコ!】5冊目『悪童日記』

mediba社員が実際に本を読んで得た“学び・気づき・感動”を、自分と同じく求めているであろう方たちへお届け。本のレコメンド、略して『ホンレコ!』。

5冊目のレコメンダーは、社内の本好きが集うサークル「読伝会」のメンバー、河越が担当します。子供の頃から大の読書好き。ただ、“本当に夢中になった読書体験”といえるものはそんなに多くはないそうです。そんななかで「ダントツに一番」だと思える本を、満を持してレコメンドしてもらいました。

本日のおすすめ図書

『悪童日記』
(著)アゴタ・クリストフ(訳)堀 茂樹
ハヤカワepi文庫
https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/310002.html

こんなあなたに

・海外文学に浸りたい
・文学好きから定評のある作品なら安心
・経験したことのない読書体験を得たい

レコメンダー

エンプロイーエンゲージメント部(ee部) 河越

※ee部とは
https://koho.mediba.jp/2019/06/27/department-employee-engagement/

はじめに

私が、初めてこの本を読んだのは、発刊当時の学生の時分なのですが、読み始めたら食事はもちろん、トイレに行くのも我慢するくらい夢中になりました。数年前に”断捨離”でほとんどの本を処分したのですが、この本と数冊だけどうしても捨てられず、手元に残してしまいました。残した数冊の内のもう二冊は、この本の続編二作です。その二冊含め、三部作どれも、こころ揺さぶる、すごい作品です。もし、この本を読まれたら、続けて続編も読まずにはいられなくなると思います。

どんな本?

戦火の中を生き抜く双子の少年。疎開先の「おばあちゃん」のもとで過酷な日々が始まります。この本は、少年らが直面した非情な現実を記した日記。辛く、悲しい状況の中をどう生き抜いていくか、克明に、しかし淡々と綴られたその内容から、少年らの心情や周囲の状況を察知することになります。

ハンガリー生まれの亡命作家が書いたデビュー作で、母語ではないフランス語で発表したということでも、とても話題になりました。

ここがポイント!

★人名や地名は一切なし

ハンガリー出身の女性作家の作品なので、この戦争は、ヨーロッパで起きているもので、物語から第二次世界大戦のことと推測されるのですが、具体的な地名や史実は明記されません。話に戦争は出てきますが、メインテーマは非常時における人間の営み、不条理の話で、戦争はただ、それを照らす装置だからなのだと思います。読んでいて、固有名詞の必要性は全く感じられません。

★日記形式かつ、独特な文体表現

戦争の残酷さや人の愚かさや冷酷さを描きながら、どこかファンタジーのような、現実離れしているような、不思議な感覚で、物語は進行していきます。なぜ、そのように感じるのか、ローティーンだと思われる主人公たちの日記という設定の小説で、自分達が見聞きした事実を淡々と、私感や感情を入れず、記していく、その文体表現がそうさせているのではと思います。そして、主人公たちの日記に記される、切り取られた事物に向ける少年らの眼差しが、どんな劣悪な状況のなかでも、決して屈しない高い理想と人間性に溢れているところが、とてもヒロイックです。そのような点が、何かおとぎ話のように感じる所以なのかもしれません。

最後に

以上を以て、私からのレコメンドとなるのですが、読み返してみて、この文章では、この本の魅力をイマイチお伝えできていない気がして不本意です。実際に少しでもこの本を読んでいただくのが、一番伝わるかと思います。ですので、最後にこの本で一番好きな(好きというか、心えぐられる部分)を抜粋して、ご紹介します。この部分を読んで、興味が出ましたら、是非、本を手に取ってみてください。そして、読めばきっと、いままでに感じたことのない読書体験が得られるでしょう。

(『悪童日記』「精神を鍛える」より。表示都合により改行位置のみ変更)

“おばあちゃんは、ぼくらをこう呼ぶ。「牝犬の子!」

人びとは、ぼくらをこう呼ぶ。「〈魔女〉の子!淫売の子!」

罵詈雑言に、思いやりのない言葉に、慣れてしまいたい。

ぼくらは台所で、テーブルを挟んで向かい合わせに席に着き、真っ向うから睨み合って、だんだんと惨さを増す言葉を浴びせ合う。
(中略)言葉がもう頭に喰い込まなくなるまで、耳にさえ入らなくなるまで続ける。しかし、以前に聞いて、記憶に残っている言葉もある。

おかあさんは、ぼくらに言ったものだ。

「私の愛しい子!最愛の子!私の秘蔵っ子!私の大切な、可愛い赤ちゃん!」これらの言葉を思い出すと、ぼくらの目に涙があふれる。

これらの言葉を、ぼくらは忘れなくてはならない。
なぜなら、今では誰一人、同じたぐいの言葉をかけてはくれないし、それに、これらの言葉は切なすぎて、この先、とうてい胸に秘めてはいけないからだ。

そこでぼくらは、また別のやり方で練習を再開する。

ぼくらは言う。「私の愛しい子!最愛の子!大好きよ……けっして離れないわ……かけがえのない私の子……永遠に……私の人生のすべて……」

いくども繰り返されて、言葉は少しずつ意味を失い、言葉のもたらす痛みも和らぐ。”

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