ヤフーに聞くデザイナー育成 カギは「幅」と「深さ」

間もなく新入社員が入ってくる時期になりましたが、みなさんの会社では受け入れの準備は進んでいますか?

medibaでは17名の新卒が入社します。

そんな中、新卒デザイナーの教育担当者(今回のインタビュアー)が、よりよいカリキュラムにすべく奮闘中。

今回は、彼の研修をブラッシュアップすべく、毎年優秀な新卒デザイナーを育て上げているヤフー新卒デザイナー研修の主担当者・田部井伸弥さんにお話を伺いました。

新卒社員と少しでも関わることがある方にとって、実務・マインドともに参考になることがあるはずです!

コマースカンパニー 事業推進室 UX戦略室 デザイン推進室 室長 田部井 伸弥(たべい しんや)さん

ヤフー式 新卒デザイナー教育プログラムとは?

――この4月から数名の新卒デザイナーの教育を担当することになったんですが、経験豊富な田部井さんに実務の面でも、気持ちの面でも教育において大事なことをお伺いできればと。今日も“鬼の研修”をよろしくお願いします!

田部井:鬼ではないですけど(笑)、弊社の場合、新卒デザイナーは部門でのOJT研修の前に集合研修というものをやっています。

集合研修では、どの部署に入っても何かしらの仕事ができるようにまずは全職種横断で社会人として必要な最低限なスキルを身につけてもらいます。そのあとにデザイナー集合研修として、サポートがあれば対応できる状態、例えばバナーをレビューしてもらえれば作れるというところまで引き上げる研修を3カ月で行います。

同じデザイナーとして入社しても、例えば美大出身の人たちは1度もコードを書いたことがない人もいるけど、逆に情報系の学校出身の人はコーディングが得意でも絵が描けない、ということがあります。

その状態でいきなり部門配属されると、その部門がやる仕事だけにスキルが偏ってしまいます。いろんな仕事をしながら経験を積んでスキルの幅を広げていってほしいなという思いで集合研修をやっています。

――なるほど、持っているスキルがバラバラの子たちに何を教えたらいいかが難しいと思っていましたが、「最低限どこでも通用するように」ということが大事なんですね。

 

カリキュラムのカギは「幅」と「深さ」

――ただ、必要なスキルといっても選定が難しいと思いますが、どのようにカリキュラムを決めているんですか?

田部井:幅(何を教えるか)を決めて、次に深さ(どこまでを教えるべきか)を決め、それからカリキュラムを作っています。

まず何を教えるか。「UI設計」「ビジュアルデザイン」「実装(コーディング)」それぞれで教えるべきスキルを書き出し、最低限の業務に関わるかどうか、部門からのニーズがあるかどうかを基準に選定していきます。

部門によっては「これは教えてもすぐには使わないスキルじゃないか?」というものもありますが、すぐに使わなくても知識として知っておいた方がいい、というものは入れて組み立てていきました。

次にどこまで教えるか。「目指すべきレベル」を明確にするため、研修前に各講義について5段階で評価するアンケートを採りました。1は「全く知らない」、2は「知っている」、3は「サポートしてくれればできる」、4は「一人でできる」、5は「人に教えられる」、という具合。

これを基に、講義ごとにどのレベルを目指すのかを定義したんです。座学だけでもいいとか、できなきゃ困るからハンズオンでしっかりやる、ということを決めていきました。

――その内容は毎回変えているんですか?

田部井:毎年アップデートしています。昔はプロセスの中のデザインの部分だけをデザイナーがやっていたので、極端な話、ビジュアルさえ作れればよかったんですよね。でもいまはUXを含めてデザイナーの領域もかなり幅が広がってきているので、それに合わせて拡張しています。

また、フロントエンドエンジニアとかぶる領域が多いので、研修でもエンジニアと連携する必要が出てくると思います。今後はそこをもっと強化していきたいという思いもあります。

 

大事なのはコミュニケーション! その中でも…

――中には「この能力を伸ばしたいわけじゃないのに……」と思ってしまう人もいるのではないですか?

田部井:まず研修についての説明をしっかりとします。講義の前にも、「ビジュアルや設計もやりますが、前後の仕事について知っておいてほしいので、ここではコーディングをやります」などと話をしています。

最初に目的をちゃんと伝えて、その上で進めていく。部門のOJT担当にもサポートをしてもらいますし、人事にも展開して方針を理解してもらっています。

――共通プログラムだと、すでに知っている知識を学ぶことになる人もいませんか?

田部井:そういう問題はたしかにありますね。トライアルで一部の講義を選択式にしたりと模索しているところです。

ただ、知識差がいい方向に働くこともあると思っていて、例えばオープンスペースに新卒が集まって新卒同士で教え合う、というのは毎年見るよい光景の一つです。

モチベーション維持の秘訣

――事前の説明もそうですが、モチベーションを維持するためにもコミュニケーションが必要ですよね。

田部井:コミュニケーションはできるだけ直接取るようにしていました。あとは実際に手を動かす課題に対して先輩社員がフィードバックする機会を増やしましたね。何がよかったか悪かったか、またその理由が分かる状況を作るのは重要かなと思っています。そこには黒帯(ヤフー社内におけるトップデザイナー)も巻き込みました。

――かなり力を入れていたんですね。

田部井:研修のコストのうちかなりの部分はコミュニケーションなんじゃないですかね。ただ、コストをかけない方法もいくつかあると思います。

ひとつは基礎知識のインプット方法。eラーニングで受講してもらったり、情報がまとめられているサイトのブックマークを渡して自分で学ぶ方法を伝える。それが済んだあとに何か作る課題も与えて、そっちはしっかり見るという方法はありだと思います。

レビューするリソースが足りない場合は、新卒が相談するためのルールを作る。「こことここを調べて分からなかったら質問に来て」とか「この時間はなんでも聞いていい時間にしよう」と固定の時間を捻出するとか。一番まずいのは、「先輩、忙しそうだから聞かない方がいいかな……」という状況だと思うので、それは回避できるかと思います。

 

プロのデザイナーとは

――とても参考になります。最後に、田部井さんが研修をする上で最も大切にしていることはなんでしょうか。

田部井:「プロのデザイナーとは」ということは一番初めに考えてほしいです。学生だと自分の作品はたくさん作っていると思いますが、自分のものではなく世の中のいろんな思いを形にしていくのがデザイナーですし、それによっていろんな課題を解決していくのがデザイナーだと思います。ただ絵を描く人、デザインを作れる人がデザイナーというわけではない、というのは伝えたいところではありますね。

偉そうに話しながら人を育てることには私もまだまだ試行錯誤の最中です。その中でも変わらず大事にしたいのは全員を同じだと思わず、最終的にはそのデザイナー一人一人に向き合って、伸ばし方を考えて行くことが大事ですね。

――試行錯誤しながら頑張ります。本日はお忙しい中ありがとうございました!

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